ビター・スイート・ラヴ
「今回のプロジェクトが成功した暁には俺も海外赴任になるかもしれない。
この間、常務から打診があったよ。今後、中国および東南アジアに力を入れ
る方針らしい。それで『ぜひ、君の力を借りたい』と頭下げられたよ」


「それってすごいじゃない。たぶん待遇は現地の支社長ね。赴任期間が終わ
れば取締役に出世するんじゃないかしら」


「まあ、それはどうだかな。でも行くとなったら最低三年は向こうで暮らす
ことになるだろうな‥」


「いやよ、私、それまで待てないわ。適齢期をとうに過ぎちゃうじゃない」


「まあ、打診があっただけで、まだ行くとは決まってないよ」


「ねぇ、今晩は泊まっていけるの?」



 あさみは甘えた声で訊いてみたが、浩輔はそれには答えずテレビに視線を
移した。



 あさみは都合が悪くなると関心を別のところに向ける、こんな浩輔の癖を
熟知していた。



 その夜は、不断にも増して浩輔の求めは激しかった。
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