ビター・スイート・ラヴ
 私に一体なにができるというのだろう。大学を卒業して一流商社に就職し
たが、浩輔と出会い結婚する為に仕事を数年で辞めてしまった。せっかく苦
労して入った会社でキャリアを積むわけでもなく‥。




 周りの友人からは一流商社のエリートの妻として羨ましがられるが、自分
自身は何の取り柄もない。以前から、そんな自分に焦りを感じていたが、そ
ことは極力考えないようにしてきた。




 結婚して数年もしたら子供を授かるだろうと思っていたし、浩輔に対して
も特別不満を抱くこともなかった。でも、それは単に由香が真剣に自分の内
面に目を向けようとしなかっただけだ。




 由香の中で何かが変わり始めていた。




 夕方、浩輔は悪びれた様子もなく帰宅した。メールによこした言い訳と
寸分も違わず、同じことを由香に言った。




 由香はそんな浩輔の言い訳を聞いているのも馬鹿らしく思え、食事の用意
をした後に適当な理由をつけてリビングを出ていった。
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