ビター・スイート・ラヴ
 浩輔はなかなかリビングに戻ってこない由香を案じ寝室にやってきた。



「どうしたんだ、調子でも悪いのか? 食事、冷めるぞ」



 ドアから首だけ突っ込んで浩輔が呼びにきた。



「あっ、うん。いま行くわ」



 由香もすかさず応えるが、まったくあなたっていう人は何も分かってない
わね、と内心苦々しく思いながら。



 二人とも自分の心の内を悟られまいと何食わぬ顔で食事をした。浩輔は海
外赴任の話しを由香に話した。



 由香はそのことにさほど驚いた様子もなく、淡々と訊いてた。



 浩輔は由香のそんな態度に少し腹を立てながらも昨夜、無断外泊した負い
目もあるので黙っていた。



 内心では、もう少し夫の出世を喜ぶべきじゃないのか、と毒づきながら。
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