ビター・スイート・ラヴ
 帰りの車中で由香は浩輔に明日は友人と会うので帰りが遅くなることを
 傍で見ているかぎり、仲の良い夫婦にしかみえないが、すでに心は通じ
合っていない。互いに気遣って歩み寄ろうとすればするほど距離を感じて
しまう。




 早く明日の夕方にならないかとそのことばかり由香は考えている。



告げた。浩輔はあからさまに不機嫌な口調で、わかった、と返事をした。




 由香はもう、なるようになれという投げやりな気持ちと淋しさで胸がいっ
ぱいになり必死で涙を堪えた。




 翌日、早々に家事を片付た。真紀に会うのに何を着て行こうか、クローゼ
ットの前散々で迷った。




 気取った服は着て行かないにしても普段着じゃあまりに悲しい。
といっても何処かに出掛ける訳でもないので頭を悩ます。




 春先なので明るいサーモンピンクのジャケットに下はベージュのパンツを
組み合わせることにした。それでも靴はおしゃれして、この前、買ったばか
りの少しヒールが高めのパンプスにした。この靴を履くと由香はかなり身長
が高くなるが、たまにはいいか‥。
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