ビター・スイート・ラヴ
 真紀さんの部屋では靴も脱ぐことだし、と勝手に想いをめぐらせて、
ひとり照れ笑いをする。



 なんでこんなにウキウキするんだろう。まるで若かりし頃のデートを
彷彿させる。



 まさに恋というものは人を何歳も若返らせる魔法の力だ。




 由香は何処か気の利いた店でケーキと花束を買って行こうと、少し早めに
家を出た。



 マンションを訪ねると、スッピンに黒いフレームの眼鏡をかけた真紀が
玄関から顔を出した。



「いらっしゃい。早かったね。どうぞ、中に入って」


「おじゃまします。途中でお花買って来たの。花瓶ある?」


「わぁー、きれいな薔薇。今日の由香の洋服にピッタリだね。淡いピンク色
で。なんかこの部屋に飾るのがもったいないくらい。花瓶、あったかな?」




 真紀は花瓶を捜しに奥の部屋に消えた。
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