ビター・スイート・ラヴ
 圭子は息を弾ませて由香の向かい側に腰掛けてウエイターにカプチーノを
注文した。



「暫く振りね。由香、少し痩せた? 何かあったの?」


「うん。実は‥私達、離婚するかもしれない。浩輔に恋人がいて、その彼女
妊娠したらしいの。今朝、夫からその話しを聞かされて彼女が産む気なら責
任をとりたいって‥。前々から薄々気づいていたのよ。だけど単なる浮気か
と思ってた」


「それで由香は、はい、そうですか、って納得したわけ?」



 呆れた様子で圭子は訊いた。



「そういう訳じゃないけど、私達ここ最近うまくいってなかったの。気持ち
が通じないっていうか‥。すれ違いの生活に疲れちゃった。幸い私達には子
供もいないし、やり直すなら今しかないって思って‥」



 しばしの沈黙の後で、これから由香はどうする気?、と圭子が心配そうに
訊いてきた。



「私はずっと専業主婦だったからスキルも何もないけど、フラワーコーディ
ネートの勉強だけは自分なりに続けてきたの。それで‥圭子は顔がひろいか
ら、誰か知り合いでそういう仕事をしている人を知らないかと思って‥虫の
いい話しなんだけど‥。そんなに世間は甘くないという事は十分、判かって
るつもりだけど他に頼れる人が居なくて‥」 



 由香は目にうっすら涙を溜めて、圭子にすがるような眼差しを向けた。
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