ビター・スイート・ラヴ
「そうねぇ‥。誰かいたかな？　ちょっと知合いに当たってみるわ。あまり
気を落とさないで、なんとかなるわよ。ところで、今日このあとの予定は？
良かったら家に来ない？」



　圭子は由香を元気づけようと言葉を掛けた。



　由香は少し考えてから、ありがとう、でも今日は自宅に帰るわ。着のみ
着のままで出てきちゃったし、と由香は圭子の申し入れを済まなそうに断
った。



「さっきの件は了解。何がなんでも由香に良い仕事を紹介してあげるから」



　別れ際に圭子は約束してくれた。



　由香はこんな姉御肌の圭子を眩しそうに見つめ、礼を言って別れた。
それから当ても無く甲州街道沿いを四ッ谷方面に歩き続けた。



　バックから携帯を取り出して見てみると三件のメール着信があった。



　三件のうち二件は夫からだった。メールの内容は連絡を取りたいという
ものだった。



　由香は家を飛び出してきた時に夫からの電話にでたくなかったので電源を
切っていた。残り一件のメールは真紀からだった。
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