ビター・スイート・ラヴ
 真紀は心配そうに由香の顔を覗き込んだ。



「そんなんじゃないわ。実は夫に恋人がいて、どうやら相手が妊娠したみた
いなの。それで夫から別れてくれって言われたんだけど、でも変よね、その
話しを夫からされた時も、あっ、そう、って感じで全然ショックじゃなかっ
た。ただ‥うまく言えないけど、今まで私達夫婦って一体なんだったんだろ
うって思ったら自然に涙が溢れてきちゃって。それは悲しいとか悔しいとか
そういうレベルのものじゃなくて‥」



「そうだったんだ‥。しばらく連絡がなかったから気になってたんだけど。
で、由香はこれからどうするつもりなの?」



「まずは、住むところを確保しないと。夫はマンションを君に譲るって、言
ってたけど、そうもいかないわ。あのマンションを買う時に、夫の実家から
援助を受けているし‥。なので早急に仕事を捜さないといけなくて。今日、
圭子に会ってそのことを相談してみたの。実はその帰り」



 真紀は真剣な表情で、一緒に暮らさない?、と由香の顔をまっ直ぐ見て
言った。



「ありがとう。でも今すぐは無理だわ‥」


「何故?」



 真紀は複雑な顔をして、由香に訊いた。
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