ビター・スイート・ラヴ
「前にも言ったと思うけど、私もちゃんと仕事をして、お互い対等の立場で
いたいの。と言うよりも、あなたにばかり負担を掛けたくないのよ。それに
私もあなたや圭子さんみたいに好きな仕事に打込んでみたい。会社を数年で
辞めてしまい、専業主婦になってみてやっと気づいたの」



「私は由香の気持ちを十分に理解しているつもり。でも、正直いって一緒に
暮らしたい。この先ずっと由香のことを待っているから‥」



「今晩うちに来る?」という真紀の誘いを断り、店の前で別れた。



 四~五日だけ実家に世話になるつもりでいる。



 たぶん両親は心配して、何かあったのかと訊いてくるに違いない。その時
は浩輔が出張したと適当な理由をつければいいと思った。



 実家には昨年定年退職した父と専業主婦の母、それに飼い猫のチーが一匹
いるだけだ。由香には五歳下の弟がいるが、すでに実家を出ている。由香が
使っていた部屋は以前のままだ。



 神楽坂から地下鉄で上野まで行き、そこから快速線に乗り換えて千葉県の
松戸市まで行く。



 真紀と別れた後、実家にこれから行くと電話をいれておいた。



 夫にも暫く実家に帰るとメールを送っておいた。
< 178 / 206 >

この作品をシェア

pagetop