ビター・スイート・ラヴ
 あさみは浩輔から浴びせられた言葉にひどく傷ついていた。



 まさか、あんなに露骨に妊娠したことを否定されるとは思わなかった。



 付合っている時に、妻とはうまくいってないんだ、と浩輔から何回も聞か
されていた。



 でも、それは既婚者の常套句だと分っていながらどうして信じてしまった
のか‥。妊娠したことを拒絶された時は、頭の中がまっ白になり何も考えら
れなかった。



 しかし冷静に考えると、自分でも男を見る目が無かったと悔やまれる。
仮に浩輔が離婚して、一緒になったところで果たして幸わせになれるだろう
か‥。もっと自分に相応しい相手がいるんじゃないか‥。



 お世辞じゃなく、あさみに言い寄ってくる男性は大勢いた。



 今が女として一番華やいでる年齢なのに、上司と不倫してその挙げ句、
望まれない子を産んで幸せなんだろうか‥。



 やはりお腹の子は堕ろしたほうがいいのか‥、あさみは旅先でもずっと
悩み苦しんだ。
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