ビター・スイート・ラヴ
「それが‥、まったく捕まらないんだよ。彼女の実家の住所も知らないし‥
まあ、会社で調べれば分ることだけど‥」


「そう‥。多分、彼女は私とあなたが、まだ一緒に住んでると思ってるの
かしら? あの時、あなたと別居してるとは言わなかったから」



 二人は自らの心を写したような霞んだ景色に目をやりながら、黙ってコ
ーヒーを飲んだ。



「ところで、これからの私達のことを話さないといけないわね。あなたに以
前言われた離婚のことも、私なりに考えてみたわ。私としてはもう少し時間
をおいてから結論を出すつもりだったけど、今井さんに会ってすこし考えが
変ったわ。彼女のお腹にはあなたの子がいるわけだし‥それを諦めることは
耐えられないことだと思うの。同じ女性としてそのつらさは理解できるわ。
なので‥、離婚も仕方ないわね‥」




 由香は取り乱すこともせず、淡々と話した。



「済まない‥」



 浩輔はうなだれて、謝るばかりだった。



 由香がこの心境に至るまで、かなりの葛藤があった。
< 190 / 206 >

この作品をシェア

pagetop