ビター・スイート・ラヴ
「やっぱり、残業になりそうだ。たまには早く帰って、由香の手料理を
食べようと思ってたのに、ごめんな」


「仕方ないじゃない、仕事だもの。あまり無理しないで」



 せっかく朝から夫の好物を作っておいたのに‥。



 マンションに帰って一人で夕食をとっても味気ないので、
圭子に電話を掛けてみた。



 圭子は大学時代の友人で広告代理店の制作部で仕事をしている
バリバリのキャリアウーマンだ。



 年中プレゼンの撮影の立ち会いやスポンサーとの打ち合わせで
飛びまわっていた。



 呼び出し音が二度なり、めずらしく恵子が電話にでた。



「もしもし、三浦ですけど」


「あっ、圭子。藤野です。久しぶり、いま大丈夫?」


「あら、久しぶりじゃない。大丈夫よ。今ちょうど仕事が一段落
ついたところ」
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