ビター・スイート・ラヴ
 仲居さんが夕食の準備が整ったと呼びにやってきた。



 案内された部屋は奥まった所で個室に仕切られている。他の宿泊客と顔を
合わすこともなく、プライベートな造りになっていた。



 浩輔とあさみは堀り炬燵式のテーブルに差し向かい、豪華な食事とお酒を
 堪能した。




 部屋に戻ると当然のように布団が並べて敷かれていた。



 浩輔は籐椅子に腰掛け一服した。



 洗顔を終えて肌の手入れをしているあさみに明日の予定を尋ねてみる。



「明日は芦ノ湖に行ってみようか? 多分、湖畔も見事な紅葉だろうな」

 
「私は独身だから帰りが遅くなっても構わないけど、あなたは大丈夫?」



 あさみは軽く皮肉を込めて言ってみた。



「なんだよ、つれない返事だな。せっかくの旅行なのに」



 浩輔は少し不機嫌になった。そんな浩輔を見てあさみは短くため息をつ
く。最近、二人の会話はちょっとしたことで噛み合わなくなる。

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