ビター・スイート・ラヴ
「真紀さんもフリーになって結構経つけど、仕事の方は順調?」


「ええ、お陰さまでレギュラーも幾つか持たせてもらっているし、こうして
単発物の仕事も頂いているので、なんとかやってます。それにしても圭子さ
ん、プロデューサーなんて凄いですね」


「そんな事ないのよ。プロデューサーなんて名ばかりで雑用ばかりよ」


「そういえばこの間、表参道のバー『ダン』に一人で来ていた女性と、たま
たま意気投合しちゃって、利根川のサイクリングコースに走りに行ったんで
すよ」


「あら、懐かしいわ。最近、忙しくて洒落たバーなんてご無沙汰だもの。私
も『ダン』には学生の頃よく行ったのよ。あそこは、女性一人でも気軽に入
れるお店よね」



 たわいのない話しをしている内に、藤野由香が二人にとって共通の友人で
あるということが判明した。



「でも奇遇よね。その日、由香からの誘いがあったのだけど、忙しくて会え
なかったのよ。そうしたら真紀さんと出会って、サイクリングする仲になる
なんて」


「まったく人の出会いって分からないですよね。まさか由香さんが圭子さん
の学生時代の友人だなんて」



 その後、店を変えて夜中の十一時頃まで飲んだ。
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