ビター・スイート・ラヴ
 店に着くと真紀はまだ来ていなかった。入り口の椅子に腰掛けて待つこと
にした。



 ほどなく真紀が息を弾ませ店に現れた。



「遅れてごめん。急な仕事が入っちゃって。ここ、すぐ分かった?」


「私も今ちょっと前に着いたばかり。お店はすぐに分かったわ。以前、
毘沙門さまにお参りに来たことがあるから」


「そうなの。とりあえず席に案内してもらいましょう」



 係の者が予約席を案内してくれた。早速、真紀がランチコースとビールを
注文した。



 お昼時をずらしたにもかかわらず店は満員だった。ビールが運ばれ二人は
乾杯した。



「うわぁー、おいしいー。なんでお昼に飲むビールって、こんなにおいしい
のだろう。世間さまは、まだ仕事をしているというのに。これはフリーで仕
事をしている者の特権ね」



 真紀はそう言うと、立て続けにグラスを空けた。



 由香は真紀の豪快な飲みぷりを呆気にとられて見ていた。

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