ビター・スイート・ラヴ
「さあ、上がって。由香さん家みたいにきれいに片付いてないけど」


「おじゃまします。きれいに片付いてるじゃない。一人住まいにしては広い
お部屋ね」


「まあね、仕事部屋も兼ねてるから」


「そうそう、これおみやげのケーキなの」


「ありがとう。今、コーヒー淹れるね。適当に寛いでて」



 リビングから香ばしいコーヒーのかおりがした。



 由香はテーブルに置かれたサイクリング誌を手に取った。



 その中の真紀が書いた特集ページを読んでみた。



 真紀がマグカップに淹れたコーヒーと、シンプルなデザインの素焼きの皿
に載せたケーキをテーブルに置いた。




「そのカップとお皿すごく素敵ね」


「ああ、これね。以前、益子に取材に行ったついでに買ってきたんだ。帰り
にふらっと立ち寄った陶芸店で、私好みの焼き物が売ってたので、つい衝動
買いしちゃった」
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