ビター・スイート・ラヴ
 知加ちゃんは抵抗せずロッカーを背に目を閉じ、真紀に抱きついてきた。



 真紀は何度も知加ちゃんの唇や頬にキスをした。



 ファーストキスはレモンの味がするなんていうけど、レモンの味なんか
しなかった。



 ただ甘い蜜のような感覚が舌に残った。



 恥ずかしさと驚きがごちゃ混ぜになって、お互いにうつむいたままで、
相手の顔を見ることができなかった。



 ようやく真紀が「帰ろう」と呟いた。そして夕日の差し込む教室を後に
した。それ以来、教室で二人きりになるチャンスは訪れなかった。



 お互いなにごともなかったように卒業式の日を迎えた。



 知加ちゃんは身に着けていた十字架のペンダントをはずして真紀の首に
掛けてあげた。
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