ビター・スイート・ラヴ
 バイトの無い日はそれに乗って、早朝、筑波山へよく走りに行った。



 今みたく道のセンターラインに追い越し禁止のポールなど、なかった時だ
ったので競い合うように飛ばして走ったものだ。



 冬場、頂上のパーキングに着く頃には陽もすっかり昇り、ひと走りした後
にそこで缶コーヒーを飲むのが至福のひと時だった。



 たとえばサーファーが早朝、誰もいない海で波乗りするのに似ているよう
な気がする。



 真紀も遅くとも朝の七時半頃には筑波山を走り終え家路についた。




 山道を走っていたおかげで、ライディングの腕はめきめき上達した。



 こんなに楽しい乗り物があるなんて‥、自分の腕次第で自由にオートバイ
を操り、何処までも遠くへ行ける。



 学校生活にも慣れバイトに明け暮れる日々だったが、真紀はある計画を
立てた。



 来年の夏休みはオートバイで北海道をツーリングをしよう。それまでに
費用を貯める。休日はツーリングに出掛け、腕を磨いた。
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