たとえば私がとなりに座ったら



赤外線送信に意外にも廣瀬さんが悪戦苦闘して、お互い送信し終わった頃には私が乗り換える駅に着いてしまっていた

もちろん、今日は夏休みで講義は無いんだけど、紫乃ちゃんと修兄が私がちゃんと廣瀬さんに連絡先を聞けたかいち早く知りたいらしく、そのまま何時ものカフェに集合になった

まぁ…紫乃ちゃんは修兄に会いたいのもあると思うけど

「それじゃあ、また」

「はい。詳しい話はまた私からメールします」

そう言って廣瀬さんは携帯を軽く振って見せた

私は首を縦に振ると、発車のアナウンスが流れ始めたので慌てて電車を降りる

「あ、待って篠原さん」

そのままカフェテリアへ向かおうとしていたら廣瀬さんに呼び止められ、何か忘れ物でもしたのかとくるりと電車の方へ向き直る

廣瀬さんは開いた電車の扉の前で立っていて

「え…と…あんまり呼び止める意味はなかったかもしれませんが」

ハハ…とどこか照れ臭そうに目線を下に落としたあと、チラリと私の顔を見て

「水族館、楽しみですね」

「……ッ⁉」

最後の最後にニコッと無邪気な笑みを浮かべてそんな言葉を言われ、私は見事にギュウッと心臓を鷲掴みにされた





「…どうしてそんなに可愛いんですか廣瀬さんは」

電車が走り去ったあと…

ホームに備え付けられてある椅子にふらふらと腰掛けて未だ熱い顔を両手で覆う

廣瀬さんの新しい一面を見れて嬉しい反面、不意打ちだと心臓に悪い




私も楽しみにしてます

とても


ニヤける顔を軽くぱんっと叩くと、散々からかわれるであろうあのカフェテリアへ向かった





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