イノセント・ラヴァー *もう一度、キミと*
あたしはカバンから財布を取り出した。

コツコツ貯めてた、なけなしの5万円。

これが今、あたしの出せる精一杯の金額。


5枚のお札を扇状に広げて、入江圭輔に差し出した。


「少ないけど……これ、使ってくれる?」

「……え?」

「さ、受け取って」


断固とした口調のあたしに、戸惑いながらも、手を伸ばして受け取る。


「どうして、あんたが、こんな……」

「……あたしにはあたしの理由があるの」


拓海のため、美咲姉ちゃんのため。

そして、あたし自身のため。


「あとは、借りるなりなんなりして、用意してくれる?」

「……」

「大丈夫。

出産費用は、結果的にはそんなにかからないはずだから」

「……」
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