イノセント・ラヴァー *もう一度、キミと*
(あたしにできるのはここまでかな)


ひとり、小さくうなずく。


「じゃあ、ね。

偉そうにいろいろ言ってごめんなさい」

「……」

「生まれてくる赤ちゃんを、大事にしてあげて」


あたしは、言葉もなく立ち尽くす圭輔さんに背を向けて。

ヒマそうにぷらぷらしてる拓海の手をとって、マンションの入り口から出た。


(ごめんね)


あたしがこのリストバンドで何もしなかったら。

二人はもしかしたら、何の問題もなく、普通にゴールインしてたかもしれない。

それとも、また別の人生があったかもしれない。


仮にそれで拓海が生まれなかったとしても。

それはそれで、彼らの真実の人生だったはずだから。


(引っかき回してしまって、本当にごめんなさい)


最後に口に出さずにもう一度謝ると。


(美咲姉ちゃん、拓海――)


祈るように、あたしは現在に戻った。
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