イノセント・ラヴァー ＊もう一度、キミと＊

圭輔さんとは何度も顔を合わせてるのに、あのときの話をしたことは１回もなかった。

初めて会ったときは、あたしが11歳の時だったから、さぞかし驚いただろうな、なんて思う。


圭輔さんの中でどう消化してるのかわからないけど。

あたしが引っ掻き回してしまったあの人が、５万円を返そうとしてくれたことは、何だか救われた気がした。


折り目のないきれいな５万円は、圭輔さんの今の人生が幸せだってことを示しているように思えたから。


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「やだ、まだ帰らない」

「拓海、わがまま言うんじゃないの！ 明日幼稚園でしょ」

「まだミソラと遊びたいの！」


なんて、いつもの押し問答が繰り広げられたあげく。

ようやく車に乗り込んだ拓海と美咲姉ちゃんを見送りに、あたしは外に出てた。