イノセント・ラヴァー *もう一度、キミと*

3.ふたたび

(これでいいんだ)



無意識にたどり着いた秘密の場所で。

あたしは体育座りをして、膝に顔を埋めてた。


川のせせらぐ音だけがあたしの耳を素通りしていく。



(拓海はどこも悪くなくて。

とっても元気で聡明で。

家族そろって仲良く暮らしてる。


――これを望んでいたんじゃないの?)


何もかもうまくいったじゃない。


(――なのに、どうしてあたしは……)


流れる川の水のきらきらしたきらめきを一人でぼんやり見ていたら。

突然ぶわっとにじんだ涙が頬に流れた。


(こら、泣くな、あたし――)


泣いちゃダメ。

ダメだってば。
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