六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
家に帰り、ハンガーにかけられた制服を見て、ため息をつく。
『しばらく、誰も好きになってはいけないよ』
留衣さんの声が、頭に響く。
「しばらくって……いつまでなんだろう……」
高校に通ってる間に、恋がしたいなあ。
そんなぼんやりした希望は、見事に打ち砕かれてしまった。
というか、これからももしかして……
もし、あたしの中の夢見姫の力が目覚めてしまったら、
『しばらく』なんて約束は無かった事になってしまうんじゃないだろうか。
あの屋敷に死ぬまで閉じ込められて、
一人で子を産むことを強要される……。
想像するだけで、恐ろしい。
特別な力なんて、なくていい。
ただ普通に生きていたい。
家族や、友達と一緒に……。
岡崎さんとも、仲良くしたい。
『姫』なんて言われて壁を作られたままじゃ、嫌だ。