六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
むっかぁ。
ホントにどうして、この人は……。
「……一族に縛られるような名前を呼ばれて、よく平気だな」
「あ……」
そうだった。
処女のまま、子を産む事を運命付けられたあたしに与えられた名前……。
「で、でも、お母さんがつけてくれた名前です!
あたしのことは何が何でもまりあと呼んでください!」
ムキになって身を乗り出すと、岡崎さんは嫌そうに一歩引いた。
「わかった……」
「じゃあ、練習です。
はいっ♪」
「そんなものするか。
とにかく飯を食えとの命令だろう?」
あたしを押しのけ、瑛さんはやけくそ気味にダイニングへ向かう。
「もう!」
「膨れるな。さっさと行くぞ。
…………まりあ」
「!!」
ほんの少し振り返って言ったその声は、
いつも通りのクセのある声だった。