六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「…りあ……まりあ!」
飛び込んできたのは、清良の声だった。
「きよ、ら……?」
「寝言言ってたよ。
その後うなされてて……
もう学校行く時間だけど、起きられる?」
何度か瞬きすると、清良の綺麗な顔がはっきり見えた。
心配そうに、眉をひそめている。
「うん……大丈夫」
あたしは重たい身体をベッドから起こす。
夜がものすごく暑かったわけじゃないのに、
じっとりと汗をかいていた。
「シャワー、浴びてくる……」
「うん。
あまり時間がないから、ちゃちゃっとね」
「はーい……」
誕生日の朝みたいに、頭がボーッとしてる。
けど、あの日の夢は、なんだか幸せで……
今日見た夢は、なんていうか……幸せでは、なかったような……
あたしはぼんやり考えながら、バスルームへ向かった。