六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】



コン、とおしるこの缶が落ちる音がして。


気づくと、オーランド君に抱きつかれていた。


「ちょちょちょちょっと!!」


どうしていいかわからずに両手をバタバタさせると、

突然左手がグイッとひっぱられた。


「何をしてる」


「瑛さん!」


手を引っ張ってオーランド君からあたしを離したのは、瑛さんだった。


「ん?ナデシコ、キミのカレシ?」


「……そんなようなものだ。気安く触るな」


「ええっ!?」


オーランド君の質問に、瑛さんは意外な答をする。


「へぇ……ヤマトナデシコちゃん、名前は?

同じクラスだよね?」


「あっ、安城まりあ……」


「答えるな。行くぞ」


なおもニコニコと話しかけてくるオーランド君から逃げるように、

瑛さんはあたしの手を引いて歩きだす。


清良も驚いた表情で後をついてきた。


あとに残されたオーランド君が、

意味深な視線をこちらに投げているのに、あたし達は気づいてなかった。



< 122 / 691 >

この作品をシェア

pagetop