六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
コン、とおしるこの缶が落ちる音がして。
気づくと、オーランド君に抱きつかれていた。
「ちょちょちょちょっと!!」
どうしていいかわからずに両手をバタバタさせると、
突然左手がグイッとひっぱられた。
「何をしてる」
「瑛さん!」
手を引っ張ってオーランド君からあたしを離したのは、瑛さんだった。
「ん?ナデシコ、キミのカレシ?」
「……そんなようなものだ。気安く触るな」
「ええっ!?」
オーランド君の質問に、瑛さんは意外な答をする。
「へぇ……ヤマトナデシコちゃん、名前は?
同じクラスだよね?」
「あっ、安城まりあ……」
「答えるな。行くぞ」
なおもニコニコと話しかけてくるオーランド君から逃げるように、
瑛さんはあたしの手を引いて歩きだす。
清良も驚いた表情で後をついてきた。
あとに残されたオーランド君が、
意味深な視線をこちらに投げているのに、あたし達は気づいてなかった。