六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
コンコン。
ドアをノックするけど、返事がない。
「瑛さーん……?」
(普通に、開きますように……)
恐る恐るドアノブを回すと、意外に普通にドアが開いた。
良かった、変なトラップが仕掛けてなくて。
足音を立てないように、静かに部屋に入る。
ベッドでは瑛さんがまだ眠っていた。
珍しい……。
寝顔は子供のようで、なんだか可愛らしい。
「瑛さん……朝ですよー」
ぽんぽんと肩を叩くと、瑛さんの体がビクンと震え、
次の瞬間にはベッドから飛び起きて苦無を構えていた。
「ひゃあっ!」
「……なんだ、お前か……」
瑛さんは苦無をしまい、何回か瞬きをした。
「あの、遅刻しますから……」
「あぁ……そうか」
まだ寝ぼけているような顔で、首をパキパキと鳴らす。
そして、もう一度あたしを見て、表情を固まらせた。