六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
保健室で少し寝かせてもらったけど、
原因不明の動悸と吐き気はおさまらなかった。
「帰ります……」
「一人で大丈夫?おうちの人、呼ぶ?」
「いえ、大丈夫です……」
「そう……気をつけてね」
保健室の先生が教室から持ってきてくれた鞄を持って、下駄箱まで移動すると。
ぞくぞくと、悪寒がした。
「えぇ~……?」
何コレ。
さっき保健室で計った時には、熱なんてなかったのに。
風邪かなぁ?
うん、そうだ。多分、胃腸風邪。
あたしはその正体不明の不安を取り払うために、自分を暗示にかけようとした。
鞄から折り畳み傘を出して頭上に広げ、校舎の外に出る。
途端にバラバラと冷たい雫が音を立てた。