六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
きっと、言われ慣れていないんだろう。
「……別に……」
ボソリと言うと、倉庫の戸を開けて、さっさと教室の方に歩いていってしまう。
変な人……。
もしかして、お礼を言われて照れたとか?
ぼんやりその背中を見ていたら、瑛さんは突然くるりと振り向いた。
「おい」
「はいっ」
「あの外国人に、気をつけろ」
「えっ?」
「俺が脅して動じずに笑ってるなんて、普通じゃない。
あまり近寄るな。
なるべく清良と一緒にいろ」
それだけ言うと、返事も聞かずに歩いていってしまった。
ぽかんとしていると、腕の中で猫がにゃあ、と鳴いた。
「やっぱり変わってるね、キミのパパは……」
何か、名前でもつけてあげようかな。
「オーリィまで疑うなんて、ねぇ……」
話しかけても、猫は瑛さんと一緒でニコリともしなかった。