六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
道は十字に交差しているけど、雨のせいか農作業をしてる人は一人もいない。
なのに、視線を感じる。
なんだろう……。たまに出る野生のタヌキだろうか。
何だか怖くなってしまい、傘を首と肩で挟み、鞄を開けた。
中には清良にもらったスタンガンが入っている。
「これ……電池とか要るのかな?てか、説明書は……」
その黒いボディを手にとった時だった。
「!!」
突然、何者かに左腕をものすごい力でひっぱられた。
体ごと、すぐそばにあった林に引き込まれてしまう。
予期しない衝撃によろけた体を、黒い影が受け止めた。
それが自分より大きな人だと感知し、恐怖が背中を走る。
「だ……っ!!」
誰なの、何なの!?
そんな疑問を口にする事は許されなかった。