六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


道は十字に交差しているけど、雨のせいか農作業をしてる人は一人もいない。


なのに、視線を感じる。


なんだろう……。たまに出る野生のタヌキだろうか。


何だか怖くなってしまい、傘を首と肩で挟み、鞄を開けた。


中には清良にもらったスタンガンが入っている。



「これ……電池とか要るのかな?てか、説明書は……」



その黒いボディを手にとった時だった。



「!!」



突然、何者かに左腕をものすごい力でひっぱられた。


体ごと、すぐそばにあった林に引き込まれてしまう。


予期しない衝撃によろけた体を、黒い影が受け止めた。


それが自分より大きな人だと感知し、恐怖が背中を走る。



「だ……っ!!」



誰なの、何なの!?


そんな疑問を口にする事は許されなかった。


< 16 / 691 >

この作品をシェア

pagetop