六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「……他の強国にあって、この国にないもの。
お前達はそれを作ろうとしているんじゃないか?」
伊奈以外の頭の上に、ハテナマークが浮かぶ。
なに、それ……?
「他の国には、人々の生活の一部に【神】がいる。
イエス・キリストだったり、神格化されたただのヒトだったり。
だがこの国には、一部の人間をのぞいて、ほとんどそれがない。
正月もクリスマスもキリスト教式結婚式も、何でもアリだ」
「何だよ、何が言いたいんだよぉ」
難しい話が苦手な太一が、情けない声を出した。
「つまり、この国の国民が全て、
同じ神を信じ、祈らざるを得ない状況を作ろうと言うんだ。
そうして団結した国は、どこより強くなるからな」
「……だから?」
「だから、この安城まりあを、
この国の女神に仕立てようって言うんだろう」
「……ええええええ!!?」
あたし達は声をそろえて絶叫した。