六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「この資料はさほど珍しくない。
夢見姫の存在を知らない者には、
伝説やおとぎ話の類とされているがな」
瑛さんが話を終えると、伊奈は不敵な笑みをその顔に浮かべた。
「……まぁ簡単に言えばそう言う事です。
さすが岡崎一族。
他のお子さん達とは違いますね」
お子さん達と呼ばれたあたし達は、全員カチンときた。
「もちろん、私達はまりあさんを大事に扱うつもりです。
何と言ってもこの国の女神に……
天照大御神(アマテラスオオミカミ)になっていただくわけですから」
「天照だと?」
「そうです。
彼女が太陽を出したり隠したりする。
時には風を起こし、地を割ってもらう。
それらが予言通りに続けば、誰もが彼女を信じるようになる」
「嘘の予言をさせるわけか。
嘘と言うか……お前達の筋書きを」
伊奈の説明についていけてるのは、もはや瑛さんだけだった。