六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
信じるな
一瞬にして全員に緊張が走る。
伊奈がスーツの胸元から、お札を何枚か取り出した。
「待て、お前はどこの所属だ」
「だから、前の政権を握っていた政党の者です」
「ただの政治家が何で術を使えるんだよ!」
太一のツッコミはもっともだった。
「あいにくですが、私は岡崎一族のように群れる気はないんですよ」
答えになってない!
再度ツッコむ暇もなく、伊奈はお札を投げつけた。
お札は空を切り、あたし達の周りの木にはりつく。
「どこ狙ってんのよ」
「油断するな。
相手は式神使いだ」
キョロキョロする清良に、瑛さんが声をかける。
その間に、伊奈が口の中で呪文を呟いた。
すると……。
「げっ!!」
太一が悲鳴を上げたのも無理はない。
お札が貼りついた木々がザワザワと鳴りだして。
ズボッ!
いきなり根が土から離れたのだ。