六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「……余計な手間をかけさせるな」
「……はい?」
クセのある声は、その綺麗な顔にぴったりだけど。
セリフは、意味不明。
てかこの声、さっきの通り魔じゃない!
なに?一体、どういう事?
疑問だらけの頭で何も言えないでいると、
その綺麗な人は、抱き上げていたあたしの体を、ふわりと地上に下ろした。
足元でぴちゃりと、雨水がはねる音がする。
「何者だ」
頭上からした声は、車の中に向けられていた。
「それは、貴方こそ」
助手席の男の人が言う。
「姫に用があるなら、本家を通してもらおう」
「通らなかったから、こうして直接来たんですがね」
二人が話している間にも雨は降り続き、
彼の綺麗な髪や肌を濡らしていく。
ひめ?姫って、あたし?
「遊んでやれ」
助手席の男の人が、サングラスの男に命じた。