六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
胸にのしかかるものが、段々重くなっていく。
「俺は依頼を受けた。
だからその為に命を張る。
それだけの事だ。
仮に、先に伊奈の護衛の依頼を受けていたとしたら、
俺は何の疑いもなく、お前達の敵になっただろう」
「そんな……」
「太一や清良、それにお前も、ためらいなく傷つけただろう」
「やめて……」
「殺す事だって、したかもしれない」
「やめて!!」
アキちゃんがテーブルに乗って、毛を逆立てた。
「……仮にの、話だ」
「…………」
「だから……あまり、俺に……気を許すな」
瑛さんは静かに言うと、背を向けて部屋を去っていく。
何で……。何で、そんな事言うの。
あたしは…………。
泣きそうになっていると、瑛さんの足音が止まった。
「……うまかった。
……ごちそうさま」
彼は少し振り返って、それだけ言った。