六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「姉ちゃん……」
「な、なに?」
「瑛さんに惚れないで……」
どこか悲しそうな声に、体が動かなくなる。
「わかってんだろ……?
好きになっちゃいけない。
傷つくだけだって……」
「…………」
「もう、あの人の事、そんな切ない目で見るなよ……。
俺、姉ちゃんが傷つくのは見たくない……!」
なに……?
それじゃ、まるで……。
あたしが、瑛さんに恋をしているみたいじゃない……。
何も答えられないでいると、
太一が体を離して目を見つめてきた。
「姉ちゃん、約束してくれよ。
自分が傷つくような事はしないって」
「太一……何で?
何でそんな事言うのか、わかんないよ……
なんでそんなに、苦しそうなの……?」
「……姉ちゃんが心配で、たまらないんだよ!
悪いかよ……!」
「太一…………」
絞り出すような太一の言葉に、
あたしはうなずくしかできなかった。