六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「ほぉ……もう護衛がいるのですね。
見たところ、キミは岡崎(おかざき)一族の人のようだ」
いつの間にか窓を全開にした助手席の男の人が、銀髪の彼に話しかけた。
メガネの奥の目は、少し細められている。
けど……笑ってはいない。
「……去れ。
彼女はまだ、何も知らない」
銀髪の彼が厳しい表情で話すと、尖ったアゴから水滴が落ちた。
「そのようですね。
こちらも、様子を見に来ただけのつもりでしたから。
今日はこれで引き上げましょう」
助手席の男の人がそう言うと、
車は泥水を跳ねながら、すごいスピードで走り去ってしまった。