六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


……どうしよう。


今更、心臓が……。


そっと起きれば良いんだけど、

瑛さんの片手があたしを抱き込むようにしてるから、

起こしちゃいそうでできない。


っていうか、もう片手、腕枕になってるじゃない!


どうして……?

あたしを寝かしてから、自分の部屋に戻れば良かったのに。



……聞いた事のない音が、胸の奥で鳴った。


あたしは、何故か……。


強力な磁力に引寄せられるように、彼に顔を近づけて。


その形の良い唇に、自らの唇をそっと触れさせた。




すぐに離すと、相変わらず規則的な寝息をたてる瑛さんの顔がある。




……どうしよう。


ダメなのに……。


いつからか、こんなに……。




「にゃん」


「あっ」


あたし達の胸の間で寝ていたアキちゃんが起きてしまった。


あたしもそっと瑛さんの手をどかし、ベッドの上で体を起こす。


その時、思いもかけない事が起こった。


< 246 / 691 >

この作品をシェア

pagetop