六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
……どうしよう。
今更、心臓が……。
そっと起きれば良いんだけど、
瑛さんの片手があたしを抱き込むようにしてるから、
起こしちゃいそうでできない。
っていうか、もう片手、腕枕になってるじゃない!
どうして……?
あたしを寝かしてから、自分の部屋に戻れば良かったのに。
……聞いた事のない音が、胸の奥で鳴った。
あたしは、何故か……。
強力な磁力に引寄せられるように、彼に顔を近づけて。
その形の良い唇に、自らの唇をそっと触れさせた。
すぐに離すと、相変わらず規則的な寝息をたてる瑛さんの顔がある。
……どうしよう。
ダメなのに……。
いつからか、こんなに……。
「にゃん」
「あっ」
あたし達の胸の間で寝ていたアキちゃんが起きてしまった。
あたしもそっと瑛さんの手をどかし、ベッドの上で体を起こす。
その時、思いもかけない事が起こった。