六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
突然ガチャッと、ドアが開く音がした。
「姉ちゃん、ただいま!」
「え……っ!?」
勢い良くドアを開いたのは、終業式の後で合流するはずの太一だった。
「おはよー、ビックリした?
って、え……!?」
物音と声に気付いた瑛さんが、むくりと起き上がる。
すると、太一の大きな目がさらに丸くなった。
そして一瞬にして、顔全体が歪んだ。
「な……っにしてんだよ!!」
この前屋上で聞いたような、絞り出すような声が響く。
「瑛さん、あんた……っ!!」
「太一、違うから!!」
今にも瑛さんにつかみかかりそうな太一を、必死で止める。
瑛さんは意外に状況を飲み込むのが遅かった。
あぁ、と小さく言ってあくびをする。
「太一、何もないから!
ただ、昨日すごく怖い夢を見て、
一緒にいてもらっただけだから!」