六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
早口で事情を説明すると、ようやく太一の殺気がおさまってきた。
「だからって、一緒に寝る?
姉ちゃんも瑛さんも、信じらんねえ」
「ごめん、でも、本当に怖い夢で……
混乱してたから」
「……ふうん。
それにしても……
とにかく姉ちゃん、着替えろよ。
瑛さん、早く立って!」
太一はまだ少し寝ぼけている瑛さんを無理やり引っ張っていった。
「……焦ったぁ……」
そりゃ、この状況を見れば勘違いもするよね。
バクバクする心臓を押さえ、自分の格好に気づく。
「げっ」
夏で暑いとはいえ、普通にノーブラで短いキャミワンピ一枚……。
なんてこと!
そりゃあ太一も焦るわけだよ!
あぁ、本当に……
「なんてこと、しちゃったんだろう……」
鏡の前で、あたしはへたりこんだ。
顔は真っ赤で、その中でも特に唇が、
いつもより赤くなってしまっている気がする。