六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
あまりの出来事に呆然として立ちすくむあたしに、銀髪の彼が近づいてくる。
そして、その紫色の瞳であたしを見た。
「安城まりあに、間違いないな」
「えっ?あ、はい……」
「お前、さっきはやってくれたな」
「……あっ」
そうだ。
この人、通り魔だった。
あたしはスタンガンで攻撃したんだった。
けど、どうして。
連れ去られそうになったのを、助けてくれたんだろう。
しかもこの人、人間……?
あたしを抱えて、軽々と飛んだし。
でも、とにかく。
「ご、ごめんなさい……。
助けていただいて、ありがとうございます」
うん、怒らせない方が良いな。
もう怒ってるみたいな顔してるけど。
「……何故一人で出歩いた?
本当に何も知らないのか?」
「……?」
銀髪の彼が、また一歩あたしに近づく。
その目にのぞきこまれると、吸い込まれてしまいそうだ。