六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
銀色の月
「まりあ、おはよーって、
あれ……?」
清良が明るく挨拶をしてくれたあたしの後ろには。
ブスッとした顔の太一と、いつもの顔の瑛さんがいた。
二人の間と言うか、太一が一方的に不穏な空気を放出している。
教室で事情を話すと、
清良は笑うかと思ったのに、微妙な顔をした。
「そりゃ太一はビックリしたんだよ」
そう太一の弁護をして、ため息をついてしまった。
終業式が終わり帰る時も、
太一は清良とだけ話して、瑛さんの方は全く見なかった。
清良はそんな異常な状態にどう対処するか、
まだ決めかねているみたいだった。
夏の重い空気が、あたし達の上にのしかかる。
明日から夏休みだというのに、
あたしにとっては憂鬱以外の何物でもなくなってしまった。