六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


「あたし、お手洗いに行ってくるね」


そう言って、部屋を出た。


やっぱり、こういうのは仲間はずれみたいで良くないよね。


一応、瑛さんにも声かけてみよう。


と、思ったんだけど……。


「迷った……」


お屋敷が広すぎて、迷子になってしまった。


「え~……」


アキちゃんに道案内を頼もうかな、なんて思っていたら。


長い廊下の先に、庭に面したガラス戸が開いているのが見えた。


「こんな夜中に……?」


誰かいるのかと思って近づくと。


「あ……」


広い庭のすみに、瑛さんがいた。


月光の下で、銀髪がきらきらと光っている。


その手には紙のようなものがあって、

瑛さんはそれを集中して見つめているようだった。


やがてその紙は、色とりどりの花びらに変化し、

瑛さんの手のひらから溢れて落ちた。


「わぁ……」


その様子があまりに綺麗だったので、思わず声が出てしまった。


< 259 / 691 >

この作品をシェア

pagetop