六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「あたし、お手洗いに行ってくるね」
そう言って、部屋を出た。
やっぱり、こういうのは仲間はずれみたいで良くないよね。
一応、瑛さんにも声かけてみよう。
と、思ったんだけど……。
「迷った……」
お屋敷が広すぎて、迷子になってしまった。
「え~……」
アキちゃんに道案内を頼もうかな、なんて思っていたら。
長い廊下の先に、庭に面したガラス戸が開いているのが見えた。
「こんな夜中に……?」
誰かいるのかと思って近づくと。
「あ……」
広い庭のすみに、瑛さんがいた。
月光の下で、銀髪がきらきらと光っている。
その手には紙のようなものがあって、
瑛さんはそれを集中して見つめているようだった。
やがてその紙は、色とりどりの花びらに変化し、
瑛さんの手のひらから溢れて落ちた。
「わぁ……」
その様子があまりに綺麗だったので、思わず声が出てしまった。