六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「不幸な顔なんか、してません!」
「あぁそうか。
そもそもお前、何をしにきたんだ」
「あっ、えっと……
皆でトランプしませんか?」
「……遠慮する。
あいつらだって、俺がいない方がいいだろう」
瑛さんは不機嫌な顔のまま。
「……それは、瑛さんが心を開かないからじゃないですか」
「……わかってる」
「……わかってるなら……」
「加えて、【トランプ】なるものの存在は知っているが、
ルールがわからない」
「…………」
はぁ、と瑛さんはため息をついた。
いやいや、ため息つきたいのはこっちですから。
「教えてあげますから!
行きましょう!」
「いや……本当にいい。
少し一人にしてくれ」
「…………」
「すまない。
本当に今夜はどうかしている」
月が近いせいか。
瑛さんはそう呟いて、夜空を見上げて黙ってしまった。
自分の銀髪と同じ色の月を見つめて。