六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】


太一に連れて来られたのは、道場の横の庭だった。


外で手合わせできるようにか、草は綺麗に刈られている。


上を見上げると、星が良く見えた。


「綺麗……」


「ホントだ。

まぁ実家も田舎だから見えるけどな。

木に隠れちまってるもんなぁ」


あたし達は道場の入口に並んで座る。


「で……どうしたの?」


「うん……」


太一は少し黙った後、決意したように口を開いた。


「……単刀直入に言うわ」


「うん?」


「俺、姉ちゃんの事、好きなんだ」


「…………え?」


「……好きなんだ」


言い聞かせるように繰り返した太一は、あたしの方を見つめた。


「す、きって……」


「……軽蔑するかもしんねぇけどさ、

俺はずっと……姉ちゃんを女として見てた」


「…………!」


太一の大きな手が、あたしの手を握った。


途端に心臓がうるさいくらいに鳴りはじめる。


< 274 / 691 >

この作品をシェア

pagetop