六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
宙を浮くような足どりで部屋に戻ると、まだ明かりがついていた。
「よっ……」
「清良……。起きてたの?」
「うん。ひどい顔ね」
言われて慌てて目元を隠した。
「寝よ、まりあ」
「うん……」
意外に清良は何も詮索せず、
あたしが布団に入ったタイミングで明かりを消した。
途端に瞼に浮かぶのは、太一の苦しそうな顔。
清良に背を向けて、顔を布団に押しつける。
すると、シーツのさりさりとした感触が頬に当たって、
涙がそこに染みていった。
「……清良ぁ……」
「うん?」
「……ちょっと泣くから、
うるさいけどごめんね……」
「うん、良いよ」
何もかも承知したかのように、明るい声でうなずいてくれる。
それが嬉しくて、余計に泣けてしまった。
「清良……知ってた?」
「……太一の気持ち?」
「うん……」
「知ってたと言うか、気づいてたって感じかな……」