六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
清良とこんな話をするのは初めてで、胸がドキドキする。
なんでわかっちゃうんだろう。
自分の気持ちを認めてしまったら……
向き合ってしまったら。
【夢見姫】の運命だけに立ち向かうより、
辛い事になりそうな気がして。
逃げてた。
逃げてた……。
だって、傷つくのが、怖い。
「でも……許嫁がいるんだって……」
「……そう……。しんどいね」
「しんどい……しんどすぎるよ……」
「うん……でもさ、それが普通だよ。
好きになっちゃったんだから……。
せめて、瑛の記憶に残ろうよ」
「記憶……?」
「あいつがジジイになって死ぬ前に、
一瞬でもまりあの顔を思い浮かべたら……
まりあの勝ちだよ」
「……どーすりゃいいのよ」
「普通にしてな。
普通に……アンタは、それでじゅうぶん」
清良はニコリと笑った。
普通にしてればじゅうぶんって……。