六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
「!」
起き上がると、すぐに隣の空の布団を見つけた。
「清良?」
なに、今の夢……。
どんなに探しても、清良がいなかった。
あたしは慌てて、部屋を出る。
勢い良くふすまを開けて廊下に出ると、
その途端に体に何かがぶつかった。
「きゃっ!」
「なんだ……お前か」
「瑛さん!」
違った。
あたしがよく見ずにぶつかっただけだった。
「何を慌てているんだ?」
「また、夢……清良が……いなくて」
「清良が?」
瑛さんが眉をひそめる。
「清良がいない夢を見て起きたら、
本当にいなくて……」
「……そいつなら……
お前の後ろにいるが?」
「……へっ?」
廊下を振り返ると、清良がニヤニヤ笑って立っていた。
「おはよ~まりあ。
ちょっとトイレに行ってたんだけど……
邪魔だった?」
「きっ、清良!」
言ってる内容はともかく、安心感が広がっていく。