六花の翼〈リッカ ノ ツバサ〉【完】
特徴のある、あの声。
いったい、どこの骨に反響したら、あんな不思議な響きになるんだろう。
ただの通りすがりじゃないことは明らかだった。
「あっ、清良、スタンガン早速使ったよ」
「えっ、いつ?」
「あの人が、後ろから抱きしめるから、ビックリして……。
今思えば、あの車に近づかせないためだったのかなぁ、なんて……」
「何ですってぇ!?抱きしめられたぁ!?」
言葉の途中で、清良は興奮して立ち上がる。
ザバンと水面が揺れ、湯気が立ち上った。
「許せない!まりあに触るなんて!」
「き、清良、ナイスバディが全部見えてるよ……」
「きぃーっ!今度会ったら八つ裂きにしてくれるわ!」
そんなこんなで、お風呂からあがってもしばらく、清良はプンスカしていた。
抱きしめられたって言っても、そんなロマンチックなものじゃなかったんだけどな……。
と言うか、超怖かった。
あーあ、初めて男の人に抱きしめられた記憶がこれかぁ……。